矢野まり子〜プロフィール紹介〜

矢野まり子画像

 「こんにちは」穏やかで優しく、それでいて力のある声で矢野まり子さんはいつも迎えてくださいます。
 山陰の山里にひっそりと建つ「絹工房」。ここで気の遠くなる作業を、一つひとつ手作業で、美しい絹織物を作り出しています。 静かできちんとした佇まいから、その作業の厳しさがうかがえます。
 美大を卒業後、民芸最後の求道者である外村吉之助氏に師事し、柳悦博氏のもとで絹織物を習得。 その後、絹織物の原点ともいえる石垣島で製作研究を経て、東京でアパレル業界に身をおき、テキスタイルデザイナーとして海外にも活動を広げ、 独立を契機にアトリエを島根県松江市宍道町に開設され、現在に至ります。
 「製作には環境が大切。ここは土と水と空気が元気です。音や匂いも好きですね。」とおっしゃいます。

工房「絹工房」

絹工房着物画像

 昔ながらの古民家、周りは山に囲まれ自然が豊かです。工房の前にはため池があり、季節になると蓮の花が咲きます。 「蓮の花が咲くとき、音がするのよ。」と、悪戯っぽく話す矢野さん。キジなども庭先に飛来するそうです。
 後ろの山には染料の椎、ヤマモモ、ヤシャブシが原生し、創作を豊かにしてくれるようです。 季節によって同じ染料の植物も染め上がり具合が違い、四季の移り変わりが心と創作を豊かにしてくれる、そんな場所です。
 「湿度が高いからゆっくり乾き、やさしい色になる。」その土地、気候、風土によって人も染めも決まり、 その土地らしいものが出来ると矢野さんはおっしゃいます。

こだわり

機織り画像

 絹は昨今、糸はもちろん生地としても海外物から機械物と多種多様で安価なものまで出回っています。
 糸を引く作業は、一般的に繭は高温で乾繭しますが、矢野さんは「生繭操糸(なままゆそうし)」という蚕が生きている状態の繭から一番良いものを選び、 「座操り(ざぐり)」という昔ながらの道具で引き、糸にします。こうすることによって、光沢と発色、柔らかさが数段違ってくると言います。
 また、絹は紫外線を吸収する性質がありますが、生繭繰糸だと紫外線の吸収が遅く、変色しにくい特質もあるそうです。
 染料も化学染料が一般的ですが、矢野さんは平安時代の延喜式(えんぎしき・・・平安時代中期に編纂された格式で、三大格式のひとつ)に載っている染料を中心に、 自然豊かで太古の昔より出雲の山の産物であった染料を使っています。

作業工程

繰糸

繭画像糸画像

 島根県には現在、養蚕農家が4軒しかありません。そこで大切に育てられた繭をわけていただきます。
 繭から糸を引くことを繰糸(そうし)といいます。
 矢野さんは、さなぎが蛾になる、わずか一週間の短い間が一番良い糸がとれることから、お湯の温度、乾燥などに気を配り、蚕が生きているうちに糸を引きます。
これを「生繭繰糸(なままゆそうし)」と言います。温度・湿度は毎日違いますから、本人の勘に頼るところが大きいとのことです。 これによって市販の絹糸とは違い、発色・柔らかさ・つやの一段とあるものに仕上がっていきます。
 繭1個から1,200mの糸が引ます。数個の繭から1本の糸をくくります。さわってみると、細さとは裏腹に固くて丈夫です。
 こうして昔ながらの座繰りの音が柔らかいリズムを刻みながら、美しい糸となっていきます。

染色

染色の様子染色の様子

 繰糸した生糸はセリシン(にかわ質)を溶かしだすために、まず藁を燃やして熱湯に入れ、1日置いて上澄みを濾し、これを沸騰させ、その中に生糸を入れます。 こうすることであの柔らかい絹糸が出来上がるのです。逆にこの作業をしない生糸を使った物が、オーガンジーや生絹(すずし)に当たります。
 次に染色ですが、季節の山々を散策して採取した自然の草木で染め上げます。 クサギ・椎の木・ヤシャブシ・ヤマモモ・茜などなど、どこまでも自然の恵みの恩恵を受けての製作です。 その材料を何度も炊き出して染液を作ります。重労働ですが、美しい色に染め上がると、その疲れもどこかに行ってしまうのだとか。


染色の様子染料画像


●染料となる植物

左から

  • ・椎の樹皮
  • ・ヤシャブシ
  • ・クチナシの実
  • ・クサギ

機織

糸画像

 かせから枠に糸を取ることも、機械を使わず昔ながらの道具で、一つひとつ丁寧に作業していきます。 糸の調子やつやなども厳しくチェックします。
 機織機はご自分の体に合わせた特別なものです。「根気の要ることだから。」と、さらりとおっしゃいますが、その集中力は素晴らしいものです。 丹念に織り上げていく様子は見ていて惚れ惚れしてしまいます。



作品

素恵画像

 「絹工房」で作り上げられた作品は「素恵(すえ)」という名がつけられます。
 すべての工程をひとりで手がけられる矢野さんの作品は、使っていて実に上質で使いやすいものです。 普段使いに是非、使っていただきたいですね。

お問い合わせ先

(株)バイタルリード

〒693-0001

島根県出雲市今市町396-1

TEL:0853-22-9690

FAX:0853-22-9715

Mail:
shop@saningoods.com